言葉が失われたはるか遠い時代。荒廃した世界でその女は自給自足の生活を送っていた。食べて、眠って、生きる。だがある日突然、決まり切った日常は一変する。山賊の一味に襲われて復讐を誓う女。そして若い男との新しい暮らし。男という他者の現れた世界の中で女はどう生き残るか……。この惑星で、戦いの果てに女が見たものは?
主演はインディペンデント映画界のミューズ、和田光沙(『菊とギロチン』『岬の兄弟』 『やまぶき』)、若い男にはモデルとしても活躍する飛葉大樹(『かかってこいよ世界』)、山賊のリーダーに仁科貴、そして旅の行商人にベテラン・寺田農が脇を固めている。 監督は『いつかのふたり』に続いて長編映画2作目となる長尾元。セリフなし、モノクロ撮影という映画史の原点に回帰した奇想天外な異色作に挑んでいる。

廃墟のような建物に住む一人の女(和田光沙)。言葉のない世界で原始的な自給自足の生活。狩猟で蓄えた食料を行商人(寺田農)と物々交換したり、女の体と食料を目当てに来た山賊(仁科貴)に襲われたりするが、そんな不測の事態にもめげることなくたくましく生きている。ある日女の仕掛けた罠に一人の若い男(飛葉大樹)が掛かっていた。女は彼を家に連れて行くと、何故か女になつく若い男。女も情が移ったのか、二人は共同で生活し始める。そんな日常が続く中だんだんと人間の欲望の姿が明らかになっていく。暴力・セックス・食欲等々……そして世界は崩壊に向かって動き始める…。

監督・脚本:長尾元

1991年生まれ、大阪府出身。
日本映画学校在学中から助監督として映画の現場に参加し、卒業後は黒沢清監督、月川翔監督らの助監督を務める。
劇場用長編「いつかのふたり」(2019)で監督デビュー。
短編「君が咲う日」(未公開)ではジェーン・オースティン国際映画祭2022にて最優秀監督賞を受賞。 今作は2本目の劇場用長編作品。

スタッフ

プロデューサー 棚橋公子
撮影 高橋草太 照明 梶本康平 録音 有国浩 
スタイリスト 加納茉季 ヘアメイク 藤原玲子 
キャスティング 北田由利子
アクションコーディネーター 根本太樹
スチール 柴田晃宏 編集 片岡葉寿紀
音楽 吉川清之 MIX・整音 橋本正明
効果 藤沢信介 CG 塚田均
カラーグレーディング 佐々木辰雄

撮影助手 長浜光玲 照明助手 柴田晃宏 中邑圭汰
アクション補佐 イチコ 現場アシスタント 扇野涼子
メイク応援 水野理恵
協力 宇野圭見 

 和田光沙(わだ みさ)

1983年生まれ/東京都出身。
趣味・農作業、銭湯巡り。24歳で運送業から役者に転身、オムニバス短編映画『靴ヶ浜温泉コンパニオン控室』緒方明監督(08)でスクリーンデビュー。映画『岬の兄妹』『菊とギロチン』では、心身共に体当たりで躍動感ある演技が反響を呼び、『由宇子の天秤』『誰かの花』『冬薔薇』『やまぶき』ドラマ『鵜頭川村事件』Netflix『サンクチュアリ-聖域-』等、数々の話題作に出演。主演作に『花つみ』『蒼のざらざら』『パラダイス・ロスト』大胆かつ繊細で説得力のある人肌演技に定評がある。2023年公開予定、映画『獣手』では、夫である福谷孝宏と共に、主演プロデュースを努める。

若い男 飛葉大樹(ひば だいき)

1998年生まれ/福岡県出身。映像を中心に活動しながら、2020年にオーディション番組ABEMA『主役の椅子はオレの椅子』で20人中、最終2位となった。雰囲気のある俳優として、MVやモデルとしての幅も広げている。一見クールで大人しそうな印象に反して、時々見せる燃えるような闘志のギャップで人気。お芝居には定評があり、映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」「死刑にいたる病」、舞台「六番目の小夜子」など多くの作品に出演している。

山賊リーダー 仁科貴(にしな たかし)

1970年生まれ/京都府出身。明治大学中退。学生時代に映画、演劇の裏方、ラジオCMの声優などを経験し、96年俳優デビュー。映画「アウトレイジ最終章」「劒岳 点の記」「血と骨」の他、「ジョンラーべ」「呉清源〜極みの棋譜〜」などの海外作品。ドラマでは「刑事ゆがみ」「サウナーマン〜汗か涙かわからない〜」など。多くの作品に出演。オフィス北野を経て現在はフリー。北野武監督最新作「首」では秀吉の家臣、蜂須賀小六を演じる。

行商人 寺田農(てらだ みのり)

1942年生まれ/東京都出身。1961年文学座付属研究所に入所。1968年、岡本喜八監督の「肉弾」で主演、同年第23回毎日映画コンクール主演男優賞受賞。1985年、相米慎二監督の「ラブホテル」でヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞。相米組の役者として欠かせない存在である。また実相寺昭雄監督との親交も深く多くの作品に出演。映画、ドラマ、舞台の他にもナレーター、朗読作品も多い。声優としては「天空の城ラピュタ」のムスカ大佐役でおなじみ。俳優だけにとどまらず、「月刊美術」や「産経新聞」に美術エッセーや書評を連載中。近年の出演作として、ドラマ「旅屋おかえり」「大岡越前6」NHKなど。また、35年ぶりの主演映画「信虎」が、ロンドンFFI2023「最優秀外国映画」に選ばれ、「外国映画部門 主演男優賞」を受賞。

キャスト

山賊A 田嶋悠理(たじま ゆうり)

山賊B 仁木紘(にき ひろし)

磯田勉(映画ライター)

女がいる。『恐竜100万年』か『はじめ人間ギャートルズ』かという原始人スタイル。しかし彼女が暮らすのは古代ではなく文明の痕跡のうかがえる廃墟。人類の社会や文明が崩壊したはるかな未来というわけか。死に絶えたのはそれだけではない。ここでは言葉もとうの昔に失われていたのだった。つまり全篇台詞なし。

女の日々の暮らしがえんえんと描かれる。眠って、起きて、水浴び、水汲み、狩り、喰い、日暮れとともにまた眠る。その繰り返し。時には商人らしき男が物々交換に訪れるが、女は孤独であった。ルーティンの日常はある日突然破られた。三人組の山賊に襲われた女の悔しさ、憎悪、憤怒。そして罠にかかった若い男との平和で、楽しく、甘い生活。女の日常は男という異物の侵入で揺らぎはじめる。やがて異文化は衝突し、争いは血を流すまでやめることはない。文明の果てた廃墟の地にたった数人で繰り広げられる戦いの図は、戦争が日常になったいまこの時代の観客に人間という生き物の愚行を突きつける。

女は若い男との暮らしにある選択をする。それは性差を超えて、自分をスポイルするすべての抑圧に抗えという女の声なき叫びなのかもしれない。未来の地球か別の惑星かマルチバースか知らないが、ここにはSF的な寓意を超えた普遍的なものがあるのだった。

けったいな映画である。台詞なし、モノクロ、スコープ・サイズの撮影。『裸の島』と『最後の戦い』のあいだに位置するユニークな映画というだけではない。開巻、真っ暗な画面に往年のハリウッド映画ばりのゴージャスなスコアが流れる。いまどき「序曲」をこの種のインディペンデント映画につけるとは。スプリット・スクリーンのサスペンスといい、シャレか本気か。とことん作り込んでいるのに画面はシンプル。形式から入る凝った意匠づくしなのにスタッフやキャストのクレジットもない匿名性。過剰なのか控えめなのか、はっきりしてもらいたい。いや、つくり手たちは映画の原初的な愉しみを自らの手に取り戻そうと真剣に遊んでいるのだ。

その中心に屹立するのがヒロインの和田光沙。言葉での表現を封じられた世界を一身に引き受け、細胞の一片一片に至るまで充実した演技でこの映画をみごと支えることに成功している。『恐竜100万年』のラクエル・ウェルチより断然和田光沙なのである。

フルカワタカシ 金澤秀浩 moco Hideo Somiya  福谷孝宏 木本 圭祐 のんこ 豊岡劇場 田中亜衣子  向山道草 よごれん 廃墟好き1103 三上昭芸 服部弘之 塩嶋史郎 陶芸の先生 近所のおばちゃん 柴田家  野村詩文 かな ずーみん wataru kawabe 358 田代浩太 田中淑子 みゅらりんご 山田佳章 ふうも 田口知弘  豊田大作 s_miki 猪狂 ひかりすぎ 美波 米田敏 MasNag M 林義広 田中敦史

あみこ チャンス∞愛 信免栄一 久保愛 Fraser 喜華 yu Kuin 西井俊樹  田所康雄 早戸 巧 小堀研一 長尾昭彦 キュピ かきちゃん まえまえ  ちもみん Clip 小野塚雅之 沢香音 Hiroko 前田弘二 上窪田雅文  ナガシオユウト ノエミ・マローン

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